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上顎洞炎(蓄膿症)が歯が原因と言われた方へ

根管治療  / 歯科口腔外科

はじめに

「上顎洞炎(蓄膿症)の原因が歯にある」と言われて、驚かれた方も多いのではないでしょうか。実は、上顎洞炎の原因の約10〜40%は歯に由来すると言われており、これを「歯性上顎洞炎」と呼びます。

トワデンタルクリニック人形町では、このような歯性上顎洞炎の診断と治療に多く携わってきました。今回は、歯が原因の上顎洞炎と診断された場合、どのような順序で治療が進むのかについて、詳しくご説明いたします。

歯性上顎洞炎とは?

上顎洞は、上顎の奥歯の根の先の上方に位置する空洞です。この上顎洞と上顎の奥歯の根は非常に近い位置関係にあり、時には根の先端が上顎洞内に突出していることもあります。

歯性上顎洞炎は、以下のような原因で発症します:

  • 歯の根の先の感染(根尖性歯周炎):虫歯を放置したり、神経を取った歯の根の治療が不十分だったりすると、根の先に膿が溜まり、それが上顎洞に波及します
  • 歯周病の進行:重度の歯周病により、歯周ポケットから細菌が上顎洞に達することがあります
  • 抜歯後の合併症:上顎の奥歯を抜歯した際に、上顎洞と口腔内が交通してしまい(口腔上顎洞瘻孔)、そこから細菌が侵入することがあります
  • 歯の破折:歯が割れてしまい、その亀裂から細菌が侵入することもあります
  • インプラントの合併症:不適切なインプラント治療により、上顎洞内にインプラントが迷入したり、感染を起こしたりすることがあります

診断のプロセス

治療の前に、まず正確な診断が必要です。

問診と視診

症状(鼻づまり、鼻水、頬の痛み、歯の痛みなど)を詳しくお聞きし、お口の中を診察します。

レントゲン検査

通常のデンタルレントゲンやパノラマレントゲンで、歯の根の状態や上顎洞の様子を確認します。

CT検査

より詳細な診断のために、歯科用CTを撮影することが一般的です。CT検査により、原因となっている歯の特定、上顎洞内の炎症の程度、骨の状態などを三次元的に把握できます。

耳鼻咽喉科との連携

必要に応じて、耳鼻咽喉科の先生と連携して診断を進めることもあります。

治療の順序

歯性上顎洞炎の治療は、原因となっている歯の問題を解決することが最優先です。以下、一般的な治療の流れをご説明します。

第1段階:急性症状のコントロール

痛みや腫れなどの急性症状がある場合、まずはこれらの症状を和らげることから始めます。

抗菌薬の投与 原因菌に効果的な抗菌薬を処方します。歯性上顎洞炎では、口腔内の嫌気性菌が原因となることが多いため、それに適した抗菌薬を選択します。

消炎鎮痛薬の投与 痛みや炎症を抑えるための薬を併用します。

応急処置 膿が溜まっている場合は、切開して排膿することもあります。

第2段階:原因歯の治療

急性症状が落ち着いたら、原因となっている歯の治療に移ります。治療方法は原因によって異なります。

ケース1:根の先に膿が溜まっている場合

根管治療(歯の神経の治療) 歯の内部をきれいに清掃し、消毒して、再び細菌が入らないように密封します。すでに神経を取っている歯の場合は、再根管治療となります。

根管治療のステップ:

  1. 歯の内部にアクセスし、古い詰め物や感染した組織を除去
  2. 根管内を専用の器具で清掃・拡大
  3. 消毒薬で洗浄
  4. 症状に応じて仮封を行い、経過観察
  5. 症状が改善したら、根管充填(根の中を詰める)
  6. 土台を作り、被せ物で修復

治療期間は通常数回〜数ヶ月かかることがあります。

歯根端切除術 通常の根管治療では改善が見込めない場合、歯肉を切開して根の先端部分を直接切除し、感染源を取り除く外科的処置を行うこともあります。

ケース2:重度の歯周病が原因の場合

歯周病治療 歯石除去やルートプレーニング(歯根面の清掃)を行います。

歯周外科 必要に応じて、歯肉を切開して深部の歯石や感染組織を除去する手術を行います。

ケース3:保存不可能な場合

抜歯 残念ながら歯を残すことができない場合は、抜歯が必要となります。抜歯の際には、上顎洞との交通(穿孔)を作らないよう、また交通が生じた場合は適切に閉鎖するよう、慎重に処置を行います。

ケース4:インプラント関連の場合

インプラントの除去 問題のあるインプラントを除去し、感染組織を清掃します。

第3段階:上顎洞炎の治療

歯科治療と並行して、または歯科治療後に、上顎洞炎そのものの治療を行います。

保存的治療

  • 抗菌薬の継続または追加投与
  • 鼻腔洗浄
  • ネブライザー療法(霧状にした薬剤を吸入)
  • 去痰薬の投与

耳鼻咽喉科での治療 歯科治療を行っても上顎洞炎が改善しない場合や、症状が重い場合は、耳鼻咽喉科での専門的な治療が必要になることがあります。

  • 上顎洞穿刺洗浄:上顎洞に針を刺して内容物を吸引し、洗浄する処置
  • 内視鏡下副鼻腔手術(ESS):内視鏡を使って上顎洞の換気・排泄路を確保する手術

第4段階:経過観察と再評価

治療後は定期的に経過を観察します。

症状の確認 鼻づまり、鼻水、頬の痛みなどの症状が改善しているかを確認します。

レントゲン・CT検査 必要に応じて、上顎洞の状態を画像で確認します。完全に治癒するまでには数ヶ月かかることもあります。

定期メンテナンス 再発予防のため、定期的な歯科検診とクリーニングを継続します。

治療期間について

歯性上顎洞炎の治療期間は、原因や症状の程度によって大きく異なります。

  • 軽症の場合:2〜3ヶ月程度
  • 中等度の場合:3〜6ヶ月程度
  • 重症の場合や外科処置が必要な場合:6ヶ月〜1年以上

根管治療だけでも数回の通院が必要で、上顎洞炎の改善には時間がかかることが多いため、根気強く治療を続けることが大切です。

治療費について

治療費は、保険診療と自費診療で異なります。

保険診療の場合

  • 根管治療:数千円〜1万円程度(3割負担の場合)
  • 抜歯:1,000円〜5,000円程度(3割負担の場合)
  • CT検査:3,000円〜4,000円程度(3割負担の場合)

自費診療の場合 精密根管治療(マイクロスコープ使用など)を自費で行う場合は、5万円〜15万円程度かかることがあります。

詳しい費用については、診断後に治療計画とともにご説明いたします。

予防と再発防止

歯性上顎洞炎を予防し、再発を防ぐためには以下のポイントが重要です。

  1. 定期的な歯科検診:虫歯や歯周病を早期に発見し、治療することが大切です
  2. 適切な口腔ケア:毎日の歯磨きとフロスの使用で、口腔内を清潔に保ちましょう
  3. 神経を取った歯の管理:過去に神経を取った歯は、定期的にレントゲンで確認することが推奨されます
  4. 抜歯後の注意:上顎の奥歯を抜歯した後は、激しい鼻かみや強い吸引動作を避けましょう
  5. 早期受診:歯の痛みや鼻の症状がある場合は、早めに受診しましょう

まとめ

歯性上顎洞炎の治療は、原因となっている歯の問題を解決することが最優先です。治療の順序は以下のようになります:

  1. 急性症状のコントロール(抗菌薬、消炎鎮痛薬)
  2. 原因歯の治療(根管治療、歯周病治療、抜歯など)
  3. 上顎洞炎の治療(保存的治療、必要に応じて耳鼻咽喉科での治療)
  4. 経過観察と再評価

治療には時間がかかることが多いですが、適切な治療により多くの場合で改善が期待できます。

トワデンタルクリニック人形町では、CT検査などの精密検査を行い、一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てています。歯性上顎洞炎でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。必要に応じて耳鼻咽喉科とも連携しながら、最適な治療を提供いたします。

ご予約・お問い合わせ

上顎洞炎や歯の痛み、鼻の症状でお困りの方は、早めの受診をお勧めします。トワデンタルクリニック人形町までお気軽にお問い合わせください。