口腔内スキャナーで変わる型取り体験 – 従来の印象材との比較、患者さんのメリット
はじめに
歯科医院での「型取り」と聞いて、どのような経験を思い浮かべるでしょうか。粘土のような材料を口の中に入れられ、固まるまでじっと我慢する。時には吐き気を感じたり、口を開けたまま長時間待たされたりする。そんな不快な記憶をお持ちの方も少なくないかもしれません。
しかし近年、デジタル技術の進歩により、歯科治療における「型取り」の方法が大きく変わってきています。その中心にあるのが「口腔内スキャナー」という機器です。
本記事では、従来の印象材を使った型取りと最新の口腔内スキャナーを比較しながら、患者さんにとってどのようなメリットがあるのかを詳しくご紹介します。
従来の型取り方法とその課題
印象材を使った型取りとは
従来の歯科治療では、歯の型を取る際に「印象材」と呼ばれる材料を使用してきました。アルジネート印象材やシリコン印象材など、いくつかの種類がありますが、基本的な手順は同じです。
トレーと呼ばれる金属やプラスチック製の器具に印象材を盛り付け、それを患者さんの口の中に入れます。印象材が固まるまで数分間、口を開けたまま待つ必要があります。固まった後、慎重に口から取り出し、それを元に石膏模型を作製するという流れです。
患者さんが感じる不快感
この従来の方法には、患者さんにとっていくつかの課題がありました。
吐き気を催しやすい 印象材が口の奥の方まで広がると、嘔吐反射が起きやすくなります。特に嘔吐反射が敏感な方にとっては、非常につらい体験となります。
息苦しさを感じる 鼻呼吸が苦手な方や鼻づまりの方にとって、印象材を口に入れたまま数分間待つことは息苦しく感じられます。
味や匂いが気になる 印象材特有の味や匂いが苦手という方も多くいらっしゃいます。
顎の疲れ 長時間口を開けたままでいることで、顎が疲れたり痛くなったりすることもあります。
精度や効率性の課題
患者さんの不快感だけでなく、治療の質や効率性にも課題がありました。
印象材の取り扱いには技術が必要で、気泡が入ったり、変形したりすると正確な型が取れません。その場合、もう一度型取りをやり直す必要があり、患者さんの負担が増えてしまいます。
また、印象を取ってから石膏模型を作り、それを技工所に送って技工物を作製するという工程には時間がかかります。被せ物や入れ歯の完成までに、どうしても日数が必要でした。
口腔内スキャナーとは
デジタル技術による新しい型取り
口腔内スキャナーは、小型のカメラを使って口の中を3Dスキャンし、デジタルデータとして歯の形を記録する機器です。
ペン型やワンド型の先端に小さなカメラが付いており、それを歯に沿って動かすことで、連続的に撮影された画像から精密な3Dモデルが作成されます。リアルタイムでモニター画面に歯の立体画像が表示されるため、撮影の進捗状況も確認できます。
スキャンの仕組み
口腔内スキャナーには、いくつかの技術方式があります。
光学印象方式 構造化された光やレーザーを歯に照射し、反射光を解析することで3D形状を計測します。
共焦点顕微鏡方式 複数の焦点面から撮影した画像を合成し、高精度な3Dデータを生成します。
いずれの方式も、1秒間に数千から数万のデータポイントを取得し、ミクロン単位の精度で歯の形状を記録することができます。
代表的な口腔内スキャナー
現在、さまざまなメーカーから口腔内スキャナーが販売されており、それぞれに特徴があります。
- iTero(アイテロ)
- TRIOS(トリオス)
- Primescan(プライムスキャン)
- CEREC(セレック)
歯科医院によって導入している機器は異なりますが、基本的な機能や患者さんへのメリットは共通しています。
口腔内スキャナーの患者さんへのメリット
1. 不快感の大幅な軽減
口腔内スキャナー最大のメリットは、型取りの際の不快感がほとんどないことです。
吐き気がない 印象材を口の中に入れる必要がないため、嘔吐反射が起きません。嘔吐反射が敏感で従来の型取りが苦手だった方でも、安心して治療を受けられます。
息苦しさがない 鼻呼吸ができれば、スキャン中も普通に呼吸ができます。印象材が固まるまでじっと我慢する必要がありません。
味や匂いの心配がない 印象材特有の味や匂いもありません。口の中に入るのはカメラの先端部分だけです。
短時間で終わる 熟練した歯科医師や歯科衛生士が行えば、片顎のスキャンは1〜2分程度で完了します。固まるまで待つ時間もありません。
2. 高い精度と再現性
デジタルスキャンは、従来の印象材を使った方法と同等、もしくはそれ以上の精度を実現しています。
変形がない 印象材は取り出す際に変形したり、時間経過で収縮したりする可能性がありますが、デジタルデータには変形がありません。
記録が劣化しない 石膏模型は保管中に欠けたり変形したりすることがありますが、デジタルデータは何年経っても劣化しません。
やり直しが簡単 もし一部が上手く撮れていなくても、その部分だけを追加でスキャンすることができます。全体をやり直す必要はありません。
3. 治療期間の短縮
デジタルデータを活用することで、治療期間を短縮できる場合があります。
データの即時送信 スキャンしたデータは、インターネット経由で歯科技工所にすぐに送ることができます。従来のように印象を郵送する時間が不要です。
CAD/CAM技術との連携 コンピュータで設計し、機械で製作するCAD/CAM技術と組み合わせることで、被せ物や入れ歯の製作期間を短縮できます。
院内製作の可能性 歯科医院によっては、院内にCAD/CAMシステムを導入しているところもあります。その場合、その日のうちに被せ物を完成させることも可能です(症例によります)。
4. 視覚的な説明とコミュニケーション
デジタルデータは、患者さんとのコミュニケーションにも役立ちます。
自分の歯を立体的に見られる スキャンした3Dモデルは、画面上で自由に回転させたり拡大したりできます。普段は見えない奥歯の裏側や、歯と歯の間の状態なども確認できます。
治療前後の比較 治療前のスキャンデータを保存しておけば、治療後と比較することができます。どのように変化したかを視覚的に理解できます。
治療計画の説明が分かりやすい 例えば矯正治療では、治療後の予測画像を見せながら説明することができます。どのように歯が動くのか、仕上がりがどうなるのかをイメージしやすくなります。
5. 記録としての価値
デジタルデータは、長期的な記録としても価値があります。
経年変化の追跡 定期的にスキャンを行うことで、歯の摩耗や歯列の変化など、経年変化を客観的に記録できます。
他院への情報提供 引っ越しなどで他の歯科医院に転院する場合、デジタルデータを提供することで、スムーズに治療を引き継ぐことができます。
トラブル時の証拠 万が一、治療に関するトラブルが生じた場合、治療前の正確な記録があることは重要です。
6. 衛生面での安心感
口腔内スキャナーは、衛生管理の面でもメリットがあります。
使い捨てカバーの使用 多くの口腔内スキャナーでは、先端部分に使い捨てのカバーやスリーブを装着します。患者さんごとに新しいものを使用するため、清潔です。
印象材の廃棄が不要 従来の方法では、使用済みの印象材や石膏模型の廃棄が必要でしたが、デジタルデータにはそれがありません。環境にも優しい方法です。
口腔内スキャナーが適している治療
口腔内スキャナーは、さまざまな治療で活用されています。
被せ物(クラウン)・詰め物(インレー)
歯を削った後の型取りに最も頻繁に使用されます。精密なデジタルデータにより、ぴったり合う被せ物や詰め物を作製できます。
ブリッジ
複数の歯にまたがるブリッジの製作にも適しています。長いスパンでも変形のないデータが取得できます。
マウスピース矯正
マウスピース矯正では、治療計画の立案から装置の製作まで、デジタルデータが不可欠です。口腔内スキャナーにより、より快適に、より正確な矯正治療が可能になりました。
インプラント治療
インプラントの位置や角度を正確に記録し、上部構造(被せ物)の製作に活用します。
入れ歯
部分入れ歯や総入れ歯の製作にも、口腔内スキャナーが使用されるケースが増えています。
注意点と限界
口腔内スキャナーは優れた技術ですが、すべてのケースで適しているわけではありません。
唾液や出血の影響
スキャンには乾燥した視野が必要です。唾液が多く出る場合や出血がある場合は、スキャンの精度が落ちることがあります。
深い部分のスキャン
歯肉の下深くまで歯を削った場合など、カメラの光が届きにくい部分のスキャンは難しいことがあります。
大きく動く軟組織
舌や頬の粘膜など、動きやすい軟組織の精密な記録には限界があります。
導入していない歯科医院もある
口腔内スキャナーは高額な機器であり、すべての歯科医院に導入されているわけではありません。
トワデンタルクリニック人形町での取り組み
トワデンタルクリニック人形町では、患者さんの負担を軽減し、より質の高い治療を提供するため、デジタル技術の活用に力を入れています。
口腔内スキャナーの導入により、従来の型取りで苦痛を感じていた方にも、快適に治療を受けていただけるようになりました。特に嘔吐反射が強い方や、長時間口を開けているのが難しい方からは、「こんなに楽なら早く受ければよかった」というお声をいただいています。
また、デジタルデータを活用した視覚的な説明により、治療内容をより深くご理解いただけるようになりました。ご自身の歯の状態を3D画像で確認し、治療計画を一緒に考えていくことで、納得して治療を進めていただけます。
まとめ
口腔内スキャナーは、歯科治療における「型取り」の概念を大きく変えました。従来の印象材を使った方法に比べて、患者さんの不快感は大幅に軽減され、精度も向上しています。
主なメリット
- 吐き気や息苦しさがない快適な体験
- 高精度で変形しないデジタルデータ
- 治療期間の短縮の可能性
- 視覚的で分かりやすい説明
- 長期的な記録としての価値
- 衛生的な処置
もちろん、すべてのケースで口腔内スキャナーが最適というわけではありません。症例によっては従来の方法が適している場合もあります。しかし、多くの場合において、口腔内スキャナーは患者さんにとってより快適で、より質の高い治療を実現する手段となっています。
歯科治療に対して不安や苦手意識をお持ちの方、特に型取りの経験がトラウマになっている方は、ぜひ口腔内スキャナーを導入している歯科医院での治療をご検討ください。
技術の進歩により、歯科治療はより快適で、より精密なものになっています。私たちは、これからも患者さんの負担を減らし、満足度の高い治療を提供できるよう、最新の技術を取り入れながら診療を続けてまいります。
何かご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にトワデンタルクリニック人形町までお問い合わせください。

