矯正治療中の歯磨きはどうすればいいですか?
こんにちは！トワデンタルクリニック人形町です。
矯正治療をスタートされた患者様、あるいはこれから始めようと検討されている皆様。「矯正装置がつくと、歯磨きが大変になる」という話を聞いたことはありませんか？
結論から申し上げますと、大変になります。 しかし、正しい知識とテクニック、そして適切な道具を使えば、矯正中でも虫歯や歯周病を完璧に防ぐことは可能です。
せっかく歯並びをきれいにしているのに、装置を外したら歯が虫歯だらけ……なんてことになっては、元も子もありません。今日は、私たち歯科医療のプロフェッショナルが、矯正中の患者様にぜひ知っておいていただきたい「歯磨きの極意」を徹底解説します。
少し長い記事になりますが、これから長い矯正期間を過ごす皆様にとって、一生モノの知識となるはずです。ぜひ最後までお付き合いください。
1. なぜ、矯正中の歯磨きはこんなにも重要なのか？
「磨き残しがあると言われるけれど、そんなに深刻なの？」 そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。まずはリスクを知ることから始めましょう。
リスク①：脱灰（だっかい）とホワイトスポット
矯正装置、特にワイヤー矯正のブラケット周りにプラーク（歯垢）が長時間付着していると、プラークが出す酸によって歯の表面のカルシウムが溶け出します。これを「脱灰」と呼びます。 初期段階では穴は開きませんが、歯の表面が白く濁ったようになります。これを「ホワイトスポット」と言います。 恐ろしいことに、一度できてしまったホワイトスポットは、装置を外しても自然には治りません。歯並びはきれいになったのに、歯の表面に四角い白い跡が残ってしまう……これは絶対に避けたい事態です。
リスク②：歯肉炎による治療の遅れ
汚れが溜まると歯茎が腫れ、出血する「歯肉炎」になります。実は、歯茎が炎症を起こしていると、歯がスムーズに動かないことがあります。また、炎症がひどい場合は、一度矯正装置を外して歯茎の治療を優先せざるを得ないこともあり、結果として治療期間が伸びてしまいます。
リスク③：口臭の悪化
複雑な装置の間には食べカスが挟まりやすく、それが腐敗したり、プラークが熟成したりすることで、強い口臭の原因となります。マスクをしていると気づきにくいですが、会話の際に相手に不快感を与えてしまう可能性があります。
2. 矯正中の「三種の神器」を揃えよう
普通の歯ブラシ一本だけで、矯正装置の汚れを落とし切るのは「不可能」と言っても過言ではありません。必ず以下のツールを揃えてください。
① 矯正用歯ブラシ（またはヘッドの小さい歯ブラシ）
装置がついていると、大きなヘッドの歯ブラシでは細かい部分に毛先が届きません。矯正専用の「山型カット」や「U字カット」の歯ブラシ、あるいは子供用や女性用のコンパクトヘッドの歯ブラシを選びましょう。
② タフトブラシ（最重要！）
矯正中の歯磨きの主役と言ってもいいのが、この**「タフトブラシ」**です。 毛束が一つだけの小さな筆のような形をした歯ブラシです。これがないと、ブラケットの周りやワイヤーの下、奥歯の裏側などは磨けません。当院でも必ず推奨しています。
③ 歯間ブラシ・フロス（スーパーフロス）
ワイヤーが通っていると通常のフロスは通せません。先端が硬く加工されている「スーパーフロス」や、サイズに合った「歯間ブラシ」を使用し、歯と歯の間、そしてワイヤーと歯の間の汚れを除去します。
3. 【実践編】ワイヤー矯正（ブラケット）の磨き方
ここからは具体的なテクニックです。ワイヤー矯正は「構造が複雑」なので、漫然と磨いていても汚れは落ちません。「意識して当てる」ことがすべてです。
ステップ1：全体をざっと磨く
まずは通常の歯ブラシで、噛み合わせの面や、装置がついていない裏側、そして装置の上から全体的に磨きます。
ステップ2：装置の「上」と「下」から攻める（45度法）
ここがポイントです。装置（ブラケット）は立体的なので、正面から当てても上下に汚れが残ります。
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斜め上から45度： 歯ブラシを斜め上から当て、毛先をワイヤーと歯の隙間に滑り込ませるようにして小刻みに動かします。
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斜め下から45度： 今度は下から突き上げるように、歯ブラシを斜め下から当てて磨きます。
こうすることで、ブラケットの「縁」に溜まったプラークを掻き出すことができます。
ステップ3：タフトブラシで「ピンポイント爆撃」
通常の歯ブラシでは届かなかった部分をタフトブラシで仕上げます。
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ブラケットの周り： ブラケットの四隅をなぞるように、くるくると毛先を動かします。
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ワイヤーの下： ワイヤーの下に毛先を潜り込ませて磨きます。
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一番奥の歯の裏側： 装置がついていると、頬が引っ張られて奥歯が磨きにくくなります。タフトブラシなら届きます。
ステップ4：鏡を見ながらチェック
「感覚」で磨くのはやめましょう。必ず洗面所の鏡の前で、唇を指でしっかりと排除し、「毛先が狙った場所に当たっているか」を目視確認しながら磨いてください。
4. 【実践編】マウスピース矯正（インビザライン等）の磨き方
「マウスピース矯正なら取り外せるから、今まで通りでいいんでしょ？」 そう思った方、要注意です。実はマウスピース矯正特有の「虫歯リスク」があります。
マウスピース矯正のリスク：唾液の遮断
マウスピースを装着している間、歯はプラスチックに覆われ、「唾液」による自浄作用や再石灰化作用が遮断されます。 もし、歯に汚れが残ったまま、あるいは甘い飲み物を飲んだ後にそのままマウスピースを装着するとどうなるでしょうか？ 細菌と糖分を歯に密着させ、唾液による防御壁がない状態で「パック」しているのと同じです。これは、非常に虫歯になりやすい環境です。
ルール1：装着前は必ず歯磨き＆フロス
食事の後は、必ず歯磨きをしてから装着してください。外出先でどうしても磨けない場合は、最低でも強めのうがいを行ってください（ただし、これは緊急避難的措置です。帰宅後すぐに磨きましょう）。 特にフロスは重要です。歯間の汚れはうがいでは取れません。
ルール2：マウスピース自体も毎日洗浄
マウスピースにもプラークや歯石が付着します。外した際は、水で洗い流すだけでなく、指や柔らかいブラシで優しくこすり洗いをしましょう。 ※注意：熱湯は変形の原因になるのでNGです。また、歯磨き粉を使うと研磨剤で細かい傷がつき、逆に細菌が繁殖しやすくなるため、専用の洗浄剤や中性洗剤を使用しましょう。
ルール3：装着中は「水」以外口にしない
装着したまま糖分の入ったジュースやカフェオレ、スポーツドリンクを飲むのは厳禁です。無糖のお茶やコーヒーも「着色」の原因になりますので、基本的には「お水」に限定しましょう。
5. 矯正中の歯磨き粉・洗口液の選び方
道具だけでなく、併用するケミカル（薬剤）も味方につけましょう。
フッ素濃度の高い歯磨き粉
矯正中は虫歯リスクが高まるため、歯の質を強化する「フッ素」が高濃度（1450ppm推奨）で配合されている歯磨き粉を選びましょう。
ジェルタイプがおすすめ
泡立ちが良すぎる歯磨き粉だと、口の中が泡だらけになり、鏡で毛先が見えなくなってしまいます。また、泡立つと「磨いた気」になってしまいがちです。 矯正中は、**泡立ちの少ない「ジェルタイプ」**がおすすめです。薬効成分が歯の隅々まで行き渡りやすく、うがいも軽く済むためフッ素が口に残りやすいメリットがあります。
洗口液（マウスウォッシュ）の活用
歯磨きの仕上げや、どうしても磨けない時の補助として洗口液を使います。ここでも「殺菌成分（CPCやIPMPなど）」が含まれているものを選ぶと良いでしょう。ただし、洗口液はあくまで「補助」であり、物理的な汚れ（プラーク）はブラシでこすらないと落ちないことを忘れないでください。
6. 外出先・学校・職場での対策
「家なら時間をかけられるけど、学校や職場ではランチの後すぐに磨けない…」 そんなお悩みもよく伺います。
「簡易セット」を持ち歩く
ポーチに「携帯用歯ブラシ・タフトブラシ・小さな鏡」を入れておきましょう。
時間がない時の優先順位
お昼休みに5分も10分も磨けない場合は、以下の優先順位でケアしてください。
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大きな食べカスを取る： 強めにブクブクうがいをして、ワイヤーに挟まった野菜や米粒を流します。
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前歯の見えるところだけサッと磨く： 見た目のエチケットとして。
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夜に徹底的にリセット： お昼に完璧に磨けなかった分、夜の歯磨きには倍の時間をかけて、フロスまで確実に行ってください。**「1日1回、プラークゼロの状態を作る」**ことができれば、虫歯リスクは大きく下がります。
7. 歯科医院でのプロフェッショナルケア（PMTC）
どんなに頑張って磨いても、自分では落としきれない汚れは必ず出てきます（磨き残し率0%にするのは、プロでも難しいことです）。 だからこそ、私たちトワデンタルクリニック人形町にお任せください。
矯正治療中の調整日（通院日）には、ワイヤーを外してのクリーニングや、専用の機械を使ったクリーニング（PMTC）を行うことができます。 また、「ここの磨き方が甘いですよ」「この角度でブラシを当ててみてください」といった、患者様一人ひとりの歯並びや癖に合わせた指導も行っています。
「磨けているか不安」 「歯茎から血が出るようになった」
そんな時は、次回の予約を待たずにご連絡いただいても構いません。早めの対処が、矯正治療を成功させる鍵です。
8. 最後に：美しいゴールを目指して
矯正中の歯磨きは、正直に言って「面倒」です。時間がかかりますし、技術もいります。 ですが、この期間に身につけた「正しい歯磨きの習慣」と「自分の歯への関心の高さ」は、矯正が終わった後の長い人生において、あなたの歯を守り続ける最大の財産になります。
「矯正をして歯並びがきれいになっただけでなく、歯磨きが上手になって虫歯にもならなくなった！」
そう言っていただけるのが、私たちトワデンタルクリニック人形町の願いです。
人形町・水天宮前エリアで矯正治療をご検討の方、あるいは現在治療中でケアにお悩みの方。私たちは、治療技術の提供だけでなく、日々のケアまでしっかりと寄り添うパートナーでありたいと考えています。
不安なこと、わからないことがあれば、いつでもスタッフにお声がけください。 一緒に、最高の笑顔と健康な歯を目指して頑張りましょう！