MTAセメントとは。根管治療における新たなスタンダード
根管治療とMTA
進化する歯髄温存療法の新たな
スタンダード
歯内治療、一般的には根管治療と呼ばれるこの治療は、歯の内部にある神経や血管が炎症を起こしたり感染したりした際に行われる非常に重要な治療法です。適切に処置されなければ、歯の喪失に繋がる可能性もあるため、歯内治療の成功率を高めるためには、精度の高い治療が求められます。
伝統的には、歯髄が感染した際には、その部分を完全に除去することが一般的でした。しかし、近年では、可能な限り歯髄を保存し、歯の機能を維持する「歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy, VPT)」が注目されています。この治療において、MTA(ミネラルトリオキサイドアグリゲート)という材料が主流となり、従来のゴールドスタンダードであった水酸化カルシウムに代わって使用されています。本記事では、歯内治療の概要、MTAの役割、そして歯髄温存療法の進展について詳しく解説します。
歯内治療と歯髄温存療法(VPT)
歯内治療は、歯の内部の根管に焦点を当てた治療です。根管には歯髄と呼ばれる神経や血管が含まれ、これが虫歯や外傷によって感染すると激しい痛みや炎症を引き起こします。これを放置すると、感染が歯の根の先まで広がり、最終的には歯の抜歯が必要になることもあります。
歯髄温存療法(VPT)は、可能な限り歯髄を保存することを目指す治療法です。
MTA(ミネラルトリオキサイドアグリゲート)の登場と普及
MTAは1990年代に登場した新しい歯内治療材料で、歯科医療において革新的な存在となりました。MTAは、トリカルシウムシリケート、ジルコニウムオキサイド、ビスマスオキサイドなどで構成され、高い封鎖性と生体親和性を持つことが特徴です。
MTAが普及するに至った主な理由は以下の通りです。
- 優れた封鎖性
MTAは非常に微細な粒子で構成されているため、根管内の微小な隙間をしっかりと封鎖し、細菌の再侵入を防ぎます。この高い封鎖性により、再感染のリスクが大幅に低減されます。 - 高い生体親和性
MTAは歯髄や周囲の組織と良好に反応し、治癒を促進します。これは、体内で異物として認識されにくいという性質に由来し、組織再生の面でも非常に優れた効果を発揮します。 - デンティンブリッジの形成促進
MTAは歯髄露出部に適用されると、デンティンブリッジと呼ばれる新しい硬組織の形成を促進します。これにより、歯髄が外部の刺激から保護され、歯の機能を維持することが可能になります。 - 耐久性と長期的安定性
MTAは非常に耐久性があり、長期的にその効果を維持できるため、治療後の予後が良好です。これは、MTAが長期間にわたって封鎖性と生体親和性を維持する能力があるためです。
水酸化カルシウムの役割と
MTAへのシフト
水酸化カルシウムは、かつて歯内治療におけるゴールドスタンダードとされていました。その抗菌作用やデンティンブリッジ形成促進効果が評価され、歯髄温存療法の材料として長年使用されてきました。しかし、MTAの登場により、その使用は補完的な役割にとどまることが増えています。
水酸化カルシウムの利点は以下の通りです。
- 抗菌作用
水酸化カルシウムは高いアルカリ性を持ち、細菌の繁殖を抑制する効果があります。 - デンティンブリッジの形成
水酸化カルシウムは、歯髄露出部に適用されると、デンティンブリッジの形成を促進し、歯髄を保護します。
しかし、水酸化カルシウムにはいくつかの欠点もあります。
- 封鎖性の低さ
水酸化カルシウムはMTAに比べて封鎖性が低く、細菌の侵入を完全に防ぐことが難しいことがあります。 - 長期的安定性の欠如
水酸化カルシウムは長期にわたってその効果を維持することが難しく、治療後の予後が不安定になることがあります。
これらの理由から、MTAが現在の歯内治療における主流の材料となり、特に歯髄温存療法(VPT)において重要な役割を果たすようになっています。
MTAと水酸化カルシウムの比較
MTAと水酸化カルシウムはどちらも歯髄温存療法で使用されますが、いくつかの明確な違いがあります。
- 封鎖性
MTAは水酸化カルシウムよりも優れた封鎖性を持ち、再感染のリスクを大幅に減少させます。 - 硬組織形成
MTAは、デンティンブリッジの形成においても水酸化カルシウムより安定した結果をもたらします。 - 取り扱い
水酸化カルシウムは比較的取り扱いが容易ですが、MTAは湿気管理が必要で、取り扱いが難しい場合があります。
まとめ
歯内治療において、歯髄温存療法(VPT)の普及とともに、MTAや水酸化カルシウムといった材料の選択が治療の成功率を左右する重要な要素となっています。MTAは、その優れた封鎖性、生体親和性、そして組織再生能力により、歯内治療の新しいゴールドスタンダードとして確立されています。
トワデンタルクリニック人形町では、最新のMTA技術や歯髄温存療法を活用し、患者様の歯の健康を守るための最適な治療法を提供しています。歯の痛みや違和感を感じた際には、早めにご相談ください。最適な治療法を提案し、あなたの歯の健康を守るお手伝いをいたします。

